××倶楽部
────「いや、まさか雨が降るなんて」
社長が困った顔して真っ白いタオルを広げると、濡れた私を包んだ。
癖のないストレートな髪から雨粒がポタンと落ちて濡れた髪が揺れる。メガネは外したままジャケットのポケットに入っているから別人みたい………でも、すごく魅力的。
「社長…………」
「だ、だめですよ。そんなふうに見つめないでください。さっきも言いましたけど、いつスイッチが入っちゃうか自信ないですからね」
社長はジャケットを脱ぐと別のタオルでゴシゴシと自分の頭を拭いていた。
シンと静まる薄暗い部屋。大きいベッドに大画面テレビ、壁と天井には鏡……怪しいグッズなどなど。
公園で散歩を楽しんでいた。フリーマーケットがやってて、手を繋ぎながらお店をのぞいて、一つのソフトクリームを二人で食べて、聖夜さん、て呼んでみたり……楽しいデートは夕方の突然の雷雨に狂わされた。
たまたま、本当にたまたま、目の前にラブホテルがあって……「付き合った初日にこんな場所に連れてくるつもりはなかったんです!」と言う社長に頷いたのは私だ。