××倶楽部
────社長と別れて、水たまりを避けながら自転車を漕ぐ。家の明かりがついているから、お母さんかお兄ちゃんが帰ってきてるんだ。
顔合わせ辛いなぁ……言わなきゃわかんないことだけど、なんとなく気まずい。
庭の端っこに自転車を停めて鍵を引き抜く。
「芽依」
突然、名前を呼ばれてびくっと肩を震わせた。
「の、の、典! ほ、本気で、ずっと待ってたの?」
「おまえバカか、動揺しすぎ」
だ、だ、だって……せっかく今の私は社長に満たされて絶好調に幸せなはずなのに、典が登場すると色々とややこしいんだ。
「そんな顔すんな。今日は俺も休みだったし、アキ兄に借りた漫画返したかったし……ずっと待ってたわけじゃねーよ」
「あ、そうなの? じゃ私が返しとくよ」
典は私をバカにしたようにふんと鼻で笑うと、右手にぶらさげてたコンビニ袋を持ち上げた。
「コンビニ行ってきた。あがるぞ」
「え、待ってよ! 典!」
典は勝手に「ただいまー」と玄関をあけて階段を上がる。お母さんも「はーい。二人ともおかえりー、雨大丈夫だった?」と答えた。