××倶楽部

「わかったよ。十秒だけ目つぶっててやるから早く着替えろ、ほらジャージ」


 ベッドの上の脱ぎっぱなしのジャージを投げると、典は目をつぶって、じゅー、きゅー、とカウントをはじめた。


「うわ、ばか待って、カウントはやい!」


 エアコンで乾かしたから少しゴワゴワしているワンピースを脱いで素早くジャージに足を突っ込んだ。


「さん、にー、いち!」


「きゃー! 待って!」


 ファスナーを首もとまであげて、脱いだワンピースを丸める。


「んなもん見たって、なんとも思わねーよ。ほら、ビール」


 ビールを受けとってプシュッと一口。ああ、美味しい。社長の前じゃ、ジャージも缶ビールも有り得ない。


「それでデートはどうだった?」

「うん、別に普通…………川沿いをサイクリングして、カフェでランチして、公園を散歩した」


 その後、変なブランコがあるラブホテルに入ったけどそれは予想外というか。アクシデントだ。




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