××倶楽部
────部屋の出窓から顔を出すと、典が帰ってく後ろ姿が見えた。
「芽依、ちょっといいか?」
ノック音と同時にお兄ちゃんが顔を見せた。
「あ、お兄ちゃん! おかえりー」
お兄ちゃんは、居心地悪そうに私の部屋に足を踏み入れるといつもの飄々とした口調で話はじめた。
「さっきから、ずっといた。だから、つまり、芽依と典の会話が丸聞こえだった」
ま、丸聞こえ!?
「え……っと」
「すまん」
謝まるなら、聞かなかったことにしてよーっ!!
「この前の続きとか、芽依に彼氏ができたとか、おまえら複雑だな?」
「お兄ちゃん! やめて! 忘れて!」
「ああ、なるべく記憶から消去するように勤める」
お兄ちゃんは頬をポリポリとかいて、窓の外を見た。
学生時代、教科書も参考書も一度読めば頭に入ってしまう、と豪語していたお兄ちゃんだ。絶対、忘れてくれないよね……