××倶楽部
────「今日はお母さんが留守なので、今からご飯作りますから大人しくしていてくださいね」
ミーナ様は、おう、と返事して、勝手に雑誌ラックの中を物色しはじめた。
いつものミーナ様なら、まだ勤務時間なのにわざわざ早退してまでくっ付いて来た。
それだけミーナ様の中では私と社長を別れさせることが最重要事項なんだろう。
ただいまー、芽依。とリビングのドアが開いて仕事帰りのお兄ちゃんと雫さんが入ってきた。
「あ! お兄ちゃん……ごめん、お客様が追加になった」
ミーナ様は、腕組みをするとつんと顎を突き出し上から目線でお兄ちゃんと雫さんを見比べた。
あああ……雫さんは一般人なんだから……そんな態度しないで欲しいよ……私のお姉さんになる人なのに…………
「ミーナ先輩……?」
「へ?」
雫さんが細い指を震わせてミーナ様を指差す。
「あれ、雫じゃん。久しぶり、こんなとこで何してんだ?」
「うそ、やだぁ……ミーナ先輩ぃ」
世間せまっ! 二人は知り合いらしく、あっけらかんとする私とお兄ちゃんの前で抱き合った。
ツワリが辛そうで、少し青白い顔していた雫さんがミーナ様にすごく嬉しそうな顔をみせている。
「誰、この女」
「あ、お兄ちゃん……ミーナ様はうちのお店のナンバーワン女王様なの」
お兄ちゃんは無表情に、女王様、と呟くと首をひねった。