××倶楽部
「朝から楽しみって……そんなこと言われても……、あの人うちの店の女王様なの! しかも、雫さんの先輩だったの! ね? わかるでしょ? 典がいるとややこしいんだってば」
「わかんねーよ。それと俺が今すぐ芽依の手料理食えないのと、どんな関係があるんだよ」
「料理なら、また作るから……」
必殺、泣き落とし……真剣に頼めば典はわかってくれるはず。
「だめだ、今日食いたい」
ですよね。私の泣き落としなんか通用するはずがない。
「飯も食うし、泊まる」
「ええっ? だって、ミーナ様も泊まるって言うし! だめだめ、それは帰って!」
典は、うーん、と眉間にシワをよせて顎に手を添えて、じっと私を睨みつけた。
お願い。空気読んでってば……!
「いいよ、わかった」
「あぁ……典ありがとう!」
「その代わりに条件がある。あの例の社長と今すぐ別れろ」
がくっと脱力して、ドラム式洗濯機に寄りかかる。
「今すぐ電話して、この場で別れれば帰ってやるよ」
典の息が耳に吹きかかり、慌てて顔をあげた。こっちは緊急事態なのに、余裕な典に腹が立つ。
「あのねっ!……っ!?」
すると、廊下側のドアから覗く顔が三つ。三人と同時に目があった。
「ちょっと! お兄ちゃん! 雫さん! ミーナ様ぁ! 覗いてないでよ!」
油断した隙に典の手が腰に回る。
「皆に見せてやろっか?」
「の、典ぃ!?」
「おっ、いいぞ! 幼なじみ! やっちまえ」
「や、やっちゃうのはお兄ちゃん反対だー!」
「あ、アキさん……」