××倶楽部

『後で僕もそっちに行っていいですか?』

「えっ? 社長がうちに来るんですかっ?」


『あ、いえ、行くと言っても、僕は芽依と会いたいだけなので……そうですね、十二時に家の前で待ってますよ。誰にも見つからないように抜け出してこれますか?』


「は、はい!」


 嬉しい! 社長から会いに来てくれるなんて!


『無理しないでくださいね、遅い時間だし、無理なら諦めて僕は帰りますから』


「そんなぁ……絶対行きます」


『そうですか、楽しみにしてます。今日は散々な一日でしたね。芽依は、リオさんのメアリーちゃんに乗せられそうになったし……』


「メアリーちゃん?」


 通話口からクスクスと笑い声がする。それがくすぐったくて散々な一日にちょっとの甘いスパイスを与えてくれた。


『三角木馬のメアリーちゃん。職権乱用だと注意しておきましたので、次はあんなことはさせません。僕の注意力不足で怖い思いさせてすみませんでした。じゃ、またあとで』


 はい、と頷いて通話を終えた。

 あの木馬……そんな可愛い名前ついてたなんて、変なの。




< 210 / 378 >

この作品をシェア

pagetop