××倶楽部
ああ、でもそっとこの窮地に光をさしてくれる社長がやっぱり好きだ。
「よし!」と一人で気合いいれて、ドラム式洗濯機に別れを告げた。
社長が会いに来てくれる。頑張れそう。
リビングでは、さっそくミーナ様と雫さんが盛り上がっている。
先週お母さんが激安スーパーで箱買いしてきた缶ビールがほとんどあいてる。ミーナ様、すごい酒豪だ。だけど典も強いから、今夜は長くなりそうだ。
一人アルコールに弱いお兄ちゃんは、雫さんの膝の上で気持ち良さそうな顔してうとうとしてる。雫さんは、暖かいウーロン茶でミーナ様にお付き合いしてる。
「それで雫、予定日はいつなんだよ」
「はい、十二月頃ってお医者さんに言われてます。ツワリの真っ最中で……でも、今日は気分がよくて全然大丈夫なんですけどね」
ふふ、と笑う雫さんは、今日も美少女戦士みたいにチャーミングだ。お兄ちゃんが言ってたとおりに気分転換できたみたいで、よかった。
「芽依、めし」
「はいはい、うるさいなぁ。典は!」
私は家政婦か! 典はほんと人使いが荒い。典が女なら、マーベラスで女王様になれるのにね。
「ツワリなんて気合いで乗り切れんだよ。産む方が百倍辛いぞー痛いんだから」
「やだ、ミーナ先輩脅さないでくださいよ……」
雫さんの顔色が曇る。
「ミーナ様、詳しいんですねー。まるで経験者みたいなこと知ってるんですね」
「当たり前だろ、経験者だから、うちの娘もう中学生」
えっ!? まさかの子持ちっ?
雫さんは、ユーナちゃんもうそんなに大きくなったんですね、と手を叩く。