××倶楽部

 男子二人がふらふらと出勤していく姿を雫さんは幸せそうに見つめて、いつまでも手を振っていた。


「アキさんは、すごいです。ただ好きな人を見送ることがこんなに素敵なことだなんて……私を幸せな気持ちにさせてくれます」



 ああ……そうそう、私が憧れた恋愛ってこういうのだ。

 その人を見つめて幸せになれて、誰にも迷惑をかけない。


 三角木馬のメアリーちゃんに乗せられそうになることもなければ、SM倶楽部の女王様が家に来て幼なじみと喧嘩することもない。


「ねえ、ミーナ様……ミーナ様がもし社長とお付き合いなさるとしたら、どんな関係になりたいですか?」


 バナナの次にヨーグルトを小さなスプーンをのせて食べるミーナ様は、ん? と首を傾げた。


「別に聖夜と付き合いたいわけじゃないし」


「ええっ!? 付き合わなきゃ、何をしたいんですか? 社長が好きなんですよね?」


「好きだけど、あたしは付き合うってことで聖夜を拘束するつもりはない。そんなダルいことしたくないね。だけど、聖夜が誰かのものでいるのは嫌なんだよ。わかったら、別れろ」




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