××倶楽部
「アハハ、雫さんって本当にお兄ちゃんが好きなんですね。お兄ちゃんだけが、ベタぼれしてるのかと思ってた」
雫さんは、そこでちょっと表情を暗くさせる。
「私のほうがアキさんを大好きです。アキさんに迷惑かけてないか心配です」
「そんなことないよ! お兄ちゃんは絶対雫さんが大好きだよ! お兄ちゃんが無理やりせまったんじゃないの?」
雫さんは、ぱあ、と表情を明るくさせた。
「いえ、私が先にアキさんを好きになりました。コミケでコスプレしていた私に、ミヤビちゃんは俺が一番お気に入りだ、って声かけてくれて……私、自分のこと言われたのかと勘違いしちゃい……その時にはアキさんを好きになっていました」
まさかの、一目惚れ? あのオタクファッションのお兄ちゃんに?
「ああいう会場では、変な人もたくさんいるんです。無断で撮影されたり、下から撮るようなことしたりする人もいます。でも、アキさんは純粋に私のこと見てくれて……」
いや、でも結果、雫さんのお腹には…………とは言えずに、私は口を閉ざして雫さんの話を聞いた。
だって、純粋なのは雫さんのほうで、幸せそうな顔してお兄ちゃんの話をしてくれるから。
自分のお兄ちゃんがいくらオタクでも、こうやって好きだと言ってくれる人がいて嬉しい。