××倶楽部

 まずは話をしたい。

 社長のため息が鎖骨に吹きかかり、思わず厭らしい声がでた。

 メガネが外れて、カーペットに落ちた。綺麗な特殊コーティングをしたんじゃないかってくらい艶やかな肌と、さらさらの髪が頬に触れる。


 あ、っと漏らした声。

 それをキスで塞がれて、着ていたカーディガンのボタンが一つずつ外され、足と足の間に社長の体が入り込む。


「ま、待ってください……」


 こんなもやもやした気持ちのままで、そういうことは出来ない。


「説得力ありませんね。残念ながら、今日は待てませんよ」


「あぁ……」


 社長は楽々と私の両手を頭上にひとまとめにすると、唇を引き上げた。

 どうしてこういう時だけ、うんと意地悪になっちゃうんだろう。

 そのセクシーな唇は勝手気ままに、次々と意地悪なことを吐き出す。


「芽依を抱きたいんです。混沌とした表情の芽依をそのまま抱いて、めちゃくちゃにしてやりたいんです。話はそれからでもいいでしょう? 今夜一晩一緒にいられるんですから」


「そんな…………っあ」



 それは好きだからですか?

 好きだから抱きたいしめちゃくちゃにしたくなるんですか?



 私、こんなにわからなくなってるのに……今日の社長は余計にわからない。



< 232 / 378 >

この作品をシェア

pagetop