××倶楽部
「シェイプアップ? お母さんたち、毎月こつこつ貯金してたのインド行くためだったんだぁ。じゃあ、お兄ちゃんたちは?」
「今日は雫さんち泊まるってさ」
「えー、じゃあ典は?」
「芽依の家に泊まる」
もう、帰ってよー。
私は一人になりたい……ああ眠い…………。
社長のお父様は強烈すぎた。まず、あの外見はどう見ても三十代前半だし……行く先々で皆を楽しませているようで実は自分が一番楽しそうに遊んでいた。
社長から、放浪癖があって……と聞いたけど、どんなふうに放浪しているのか、なんとなく想像できた。
グラスを持つ姿も、さっと足を組む姿も、酔って両手に女の子を抱きかかえている姿も、すごくすごく女心をくすぐる容姿。
隣に座れば、必ず寄り添いたくなるような人間磁石みたいな人なんだ。
きっと、行く先々で受け入れられているんだろう。あの親子の外見は、そういうことに利用できるくらい完璧だ。
それにしても、酷いのはリオ様だよ。社長とどんな話をしたのか知らないけど、きっと二人の話し合いは深刻だったはずだ。
それなのに「聖夜なんてやめて摩夜さんと付き合おうかなぁー」とか言いながら、お父様といちゃいちゃしてたし、ミーナ様は「そうだよ、リオと摩夜さんが付き合え」って二人を猛烈プッシュして楽しんでるし。
お父様はお父様で、「俺は聖夜のものだから」と渋い顔して何度も言うから、話は平行線を一方通行。
社長がリオ様を思い通りにできない歯がゆさみたいなものが、二人の障壁になっているとしたら…………女王様にあのお父様に振り回されて社長もくたくたなんだ。平和を願う気持ち、よくわかる。
可哀相な社長。
でも、リオ様が本当にお父様と付き合っちゃったらどうしよう。あ、でもそれなら私たちの邪魔はされない。
でもミーナ様は? もっと私たちの邪魔してきそうだ……
ああ、ダメだ。思考能力が低下してて、これ以上はネガティブ思考に突入しそう。涙でそう…………
「芽依、帰るか。疲れてるみたいだし」
「うん、典ごめん。また今度付き合う」
居酒屋を出て、典が運転する自転車の荷台に乗った。典の腰に手を回す。典の背中が暖かくって気持ちいい。
「あのなぁ……彼氏じゃない男に、密着すんじゃねーよ」