××倶楽部
「芽依、まあ、あんま難しいこと考えんなよ。付き合うとか、好きになるとか、そういうの頭で考えてどうにかなる問題じゃないし」
肩の手が優しくエスコートしてくれる。人ごみの中を、私が誰ともぶつからないで歩けるように導いてくれる。
「典……」
典は、なに? と小さく首を傾げた。その意志の強そうな瞳、端正で綺麗にまとまっている横顔。
当たり前に、ずっと隣にいてくれた典。
「ごめんね……私、よくわからなくて……」
すると、典は、ぶっと吹き出した。
「それはそれで最低だな! でも、いいから。俺は芽依を誰かにやるつもりないから」
本当、最低だよ。好きなら好きって最初から言ってくれなきゃわからない。
近すぎたから、典の性格上素直に好きって言えなかったのかもしれないけど……
そんなことも、わかってしまうのが幼なじみの怖いところだ。
社長が何を考えてるのかわからないけど、典のことは何でもわかってしまうんだ。