××倶楽部
16
────「ほら、いつまで泣いてんだよ! 涙ふけよ」
「だって感動したんだもん」
「そうか? 俺はいまいちだったな……」
一番すいてるから見てあげなきゃ可哀想、っていう安易な理由で選んだ映画は、原作者も無名で、たった三日間しか公開されてない人気のない映画。
典はレイトショーとか、小さな映画館が好きで、人気の大作よりもそういうものを好んでみるから、それに付き合うのは慣れている。
「あのニューヨークのシーンは、もっと舞台を生かすべきだったな。すぐにベッドシーンに縺れ込むから感動も一瞬で終わる。あ、まさか、芽依はああいう緩い男がタイプとか? だから、おまえ騙されやるいんだよ!」
「なんで? 結人、すごくかっこよかった!」
典は、だめだコイツ……、と舌打ちすると、私の手を掴んで歩きだす。
ドキンと胸がなる。映画の中の素敵な彼より、今隣にいるのが典だと思うと余計に胸がドキドキした。
もう意識しないで普通にできない。
「次は、飯にする? それとも買い物?」
「典が決めて」
「でた、優柔不断」