××倶楽部
ドキドキがバレないように自然な足取りで隣を歩く。
「そうだ、はじめてお給料もらったから……お母さんとお兄ちゃんに何かプレゼントしてあげたいな。それから雫さんにも」
典がたまに見せてくれる円い表情で、オッケー、と言って私の手を引いた。
繁華街の広い歩道、道沿いには華やかなショッピングビル。通りには車がひっきりなしに走っていて、典と手を繋いで歩く。
こんなこと今まで何回もあった。当たり前のことなのに、昨夜のことと、今朝のことが重なって典を直視できない。
歩道と車道の境界線に、黄色いペンキで塗られた駐停車禁止の模様を眺めてた。
すると、そこに一台の黒塗りの車が停車した。
あ……駐停車禁止なのに……
歩道を行き交う人は、何事もないように歩みを止めない。
車は黒く、ガラスには前も後ろもスモークが貼ってあって、いかにもあっち系の方の車だ。
ピカピカに磨かれた車体からは、黒いスーツ姿の男の人たちが三人降りてきた。
別に私たちの方を見ていたわけじゃないけど、なんとなく典の腕を小突く。
「ばーか、見るな」と言われて、それもそうだな、と目線をそらした。