××倶楽部
「スミレ様ぁ! 待って!!」
「芽依っ! あぶなっ!! おまえ、何考えてんだよ!」
車を追いかけようとした私の腕を典が掴んで、後ろから抱きかかえられた。私たちのすれすれのところを車が次々と走り抜けていく。
「離してよ、典!」
「バカ芽依! 走って車追いかけられるわけないだろ!」
そうだけど……そうだけど。スミレ様、ストーカーに追われてたんだ。
どうしよう、私すぐ近くにいたのに助けてあげられなかなった。
「芽依ちゃんっ!」
歩道には人集りができていて、その中からマサキさんが飛び出してきた。
「何だ? てめぇ」
典が私を守るように前に出た。
「典、マサキさんはマーベラスの女王様のボディーガードなの」
「ボディーガード? 超役立たずだな」
マサキさんは、ヨロヨロと力なくガードレールに両手をついてうなだれると、すいません、と小さな声で謝った。