××倶楽部

 アクションのない角刈りのおじさんを前に、どうするんだろ? と典の影に隠れながら様子をうかがっていると、突然、ギギギギッ、とすごい音がして木の門が開いた。


「どうぞ、お頭がお待ちです」


 太く低い声で中を指さされる。


 は、は、入るの?


 入ったら二度と出て来れないとか、そういうわけじゃないよね?



 だけど、私の心配をよそに、他の四人は軽い足取りで中に入る。

 もう、待ってよ!

 社長の腕にからまってるリオ様とミーナ様、その後ろを典と追いかける。


「おー、すげー、広い! 京都みたいだな」


 典は、一般人のくせに呑気に広大な日本庭園を見渡している。


 目がつり上がり、口が避けた般若のお面がかけられた玄関で靴を脱いで案内通りに奥へと進む。


「こちらでお待ちください」


 案内してくれた角刈りのおじさんが私たちに頭を下げると、膝をついて座り襖を少し開く。


「お頭、クラブ マーベラスの社長がいらっしゃいました」

 一本太い筋が通っているような声に、びくっと肩を揺らす。

 ミーナ様は中が気になるようで、少しだけ開いた襖から、背伸びをして中の様子をうかがっていた。



 
< 272 / 378 >

この作品をシェア

pagetop