××倶楽部
「でも、仕事が忙しいという事実じゃろ! 貴様、わしのスミレちゃんに過酷な労働をさせやがって! 堪忍せえっ!!」
体制を立て直し、リオ様から渡された短刀を掴んだ組長さんは、スミレ様が抱きついたまま放心状態の社長を睨みつけた。
「おまけに、おぬしは、わしのスミレちゃんの……スミレちゃんの臍に変な穴あけやがったなぁ! 覚悟しろぉ!」
短刀が天井に向かって振り上げられる。よく見ると鞘におさめられてる。
「パパ、あれは自分であけたの! 臍ぴだし!」
こんな緊迫した状態で、あれだけど……ちょっと可笑しい…………
「ぶっ、あほらしい」隣の典は遠慮なく吹き出した。
「申し訳ございません。事情がよくわからずに失礼いたしました。うちの店は未成年者は働けないもので、親権者や保護者の承諾というものをとる習慣がありませんでした」
社長は吹き出すどころか、スミレ様を膝にのせたまま深々と頭を下げた。
「ですが、過酷な労働をこちらから強いていると誤解なされているようなので、その質問には経営者としてきちんとしたいと思います」
組長さんは、はあはあと荒く深呼吸すると、赤い顔をしたまま社長の目の前で、うむ、と唸った。
「こういうことは、本人の意見を最も尊重すべきでしょう。スミレさん、うちでの仕事は辛いですか?」
「ううん、全然。聖夜のこと大好きだし、マーベラスも大好き。パパが勝手に勘違いしてんのよ」
スミレ様は、組長さんに、ベーッと舌を突き出した。