××倶楽部
「な、なぬっ?」
「お頭、また血圧が上がっちまいますので、冷静に……」
どんと尻餅をついた組長さんは、肩を叩かれて俯くと、そのまま、ふーふー、と深呼吸を繰り返した。
「まあ、そっちの言い分は、わかった……」
「スミレさんは、お客様にもスタッフにも、とても人気があります。愛嬌があって可愛らしくて、それでいて自分の意志をしっかりと持っている。大切育てられたからこその我が儘な性格、だけどその殻の中でおさまるような女性じゃないところ、女王様としてはこんなに素晴らしい逸材はいません。
ただ、人気があるからこそ、忙しいということはあると思います。もし、スミレさんからの申し出があれば、僕としては勤務時間を減らしてもらっても構いません」
えー、聖夜……と唇を尖らしたスミレ様に、社長は「お父様としっかりと、話し合って決めてください」と言い放つ。
「パパは、すぐに私のやることに反対する。聖夜は、私のやりたいって言ったことはちゃんと受け入れてくれるもん」
社長は、困ったような顔をしてスミレ様に頭を下げる。
「そう言っていただけると嬉しいです。正直、僕はスミレさんの気持ちのほうがよくわかるんです。うちの父も、色々酷いですからね……。
でも、スミレさん。それだけ、愛されて幸せだと思いませんか? 親は大切にしましょうよ。仕事はかえられても、家族は一つです。大切にしましょうよ」