××倶楽部
「芽依がこうしててくれるなら寒くありませんよ……すみません、少し酔っているみたいで風が気持ちいいんです」
「あ……やっぱり、酔ってますよね……」
風に乗る甘いお酒の香り。社長の額が私の肩に寄りかかる。
「でも、意識はありますし、自分が何を発言しているかは理解してますよ」
よかった。意識が飛んじゃうタイプじゃないみたいだ。それに社長の微笑みは健在で酔っていても素敵なままだ。
でも、話すとは言ったけど、先ずは何から説明すればいいんだろう……声が上擦り、口調がはやくなる。
「あの。社長……えっと……典のことですけど……典とは産まれた時からの幼なじみでして、母親同士も仲がよくてきょうだいみたいに育ったんです。だから、最近まで私は典を恋愛対象としてみていなくて……」
「それで、僕があらわれたことによって、彼はマズいと思ったわけですね。芽依を盗られるって」
「え、いや、あの、典の気持ちは……」
典の本当の気持ちはわからないけど、社長が言ったことがあながち外れじゃないような気もする。