××倶楽部

「それで、芽依の気持ちは?」


 くるりと後ろを振り返ると、社長と対面する。

 ほんのりと赤い頬に、艶やかな唇。

 優しい瞳に、全てを受け入れてくれる包容力……素敵な人。

 このまま付き合っていれば、いずれどんな問題も解決して私を幸せにしてくれそう。



「私の気持ちは、あの…………っあ!?」


 社長の後ろの障子に、指で開けた穴が二つあいていて、そこから覗く二つの意志の強そうな視線とバチっと目が合った。


 の、典ぃ!?



 勝手に障子に穴開けてるし! 全然、二人にしてくれてないし!!



 社長は気がついていたのか、ふっ、と吹き出すと、愛されてますね、と私の耳元で囁く。

 社長が何を言ったのか聞き取れなかったらしく、障子がガタッと揺れた。



 芽依、僕が一つだけ教えてあげますよ……社長はさらに声を潜めた。



「父たちと飲みに行った時に思ったんですけど、芽依もあまりお酒に強くないですよね?」

 耳元に社長の甘い吐息がかかり、背筋がぞくぞくする。


「はい……うちは母も兄もお酒にはあまり強くないです…………でも、お酒が嫌いなわけじゃないのでビールとかは飲みますけど、量はそんなに……」


 障子の二つの目からは痛いくらいの視線が突き刺さる。もうあっち行ってよ! 手でしっしと払いのける仕草をすると、社長はその手を掴んだ。


 酔ってるのに、手が冷たい……心はその分暖かいんだろう。



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