××倶楽部
人生ではじめて付き合えた恋は無惨にも振られて幕をとじた。
社長は完璧に私を振った。
恋人としては、終わりですね、って何事もなかったかのような、あっさりとした幕引きだ。
原因が私が無意識に典の名前を呼んだことなんて、自分には絶対起こり得ないことだと思ってた。
私って、そういう女…………ぁあああ! 処女なんてはやく捨てたいと思ってたのに! こんなオチいらないよっ!
「ねえ、一応教えといてよ。私のはじめてって、いつ?」
突然歩く速度を落としたから、後ろを歩いてた典が、あぶねっ、と私を避けて隣で肩を並べた。
「ああ、クリスマスだよ。ほら高校の時に俺散々女に追いかけまわされて芽依の家に避難しただろ? 女が家の前で待ち伏せしてて、帰れなくなった時」
あ……あの時は、たしかお母さんがアルコール入りのシャンパンを買ってきて、私はただの葡萄ジュースだと思って飲んじゃったんだ……
「言っとくけど俺訊いたからな、いいか? って、そしたら芽依が、いい、って言ったんだからな!」
「そんなの記憶がある時に訊いてよ!」
「わかんなかったんだから、仕方ないだろ!
それに俺もショックだったよ。次の日の朝起きたら、隣で寝てただけで、変質者呼ばわりで部屋から追い出されるし、アキ兄にバレて怒られるたし、散々だったな」
うっ……あまり覚えてない。そうだったっけ?
「でも、芽依が好きだから、その時は嬉しかったけどな奈落の底に叩きつけられた俺の気持ち考えてみろ。芽依には自分で気がついてもらいたかった。俺から言われたからじゃなくて、自分で気がついて欲しくて黙ってた」