××倶楽部

 膝に手をついて呼吸を整える。

 灰色のアスファルトにため息を吐き出した。

 胸が苦しくて、呼吸が煩わしいのに、何故か心がすっと軽くなった。


 社長じゃ駄目だ、何か違うって、とっくに気がついてた。リオ様や女王様たちのこととかもあったけど、結局一番の大きな要因は、今目の前で無表情に腕を組んで私を見下しているこの男。


「典のほうが……好きだった……」


 社長には、自分からこのことを伝えるつもりだった。

 でも、多分社長は全部気がついていて、私が自分の口で典に伝えられるようにしてくれたんだと思う。

 最初に告白してくれたのは、多少なりとも好意を抱いてくれていたから……だけど、さっきのは典の性格をみて、闘争心を煽るため……


 社長はそういう人。



「やっと、気がついた……?」


「うん……ごめん、長かったでしょ」


 私にとって、典よりいい男なんて見つけられるはずがない。

 だって、典が最高の男だったんだから……


 自分勝手で俺様で、おまけに処女まで奪われてそれを黙っていられたけど…………典がはじめてで良かった、と嬉しかったりもする。





 
< 297 / 378 >

この作品をシェア

pagetop