××倶楽部
「えっと……将来のためじゃないですか?」
「将来なんて何が起こるかわかんないだろ、あたしの中学生時代なんてこれだよ、これ」
ミーナ様がどこからともなく取り出した写真。そこにはレディース総長にまでのし上がったという伝説のミーナ様が不良座りでこちらを睨みつけていらっしゃった。
「で、この隣のが雫だよ。芽依に見せてやろうと思って持ってきたんだよ」
「し、雫さん??」
うわぁ……雫さん、今の面影ゼロだよ!
鉛筆で薄く一本書いたような眉に黒に羽織りに金字の刺繍……手には木刀を持ち、この世の全てを恨んでいるような鋭い睨み……
見ちゃいけないものを見てしまった。
「雫、ずいぶん真面目になっちゃっただろ?」
「あはは……ははは……それより、ミーナ様もうすぐお客様いらっしゃる時間ですよ。お店に戻ってください。
今日はクリスマスだから、はやめに切り上げてユーナちゃんとパーティーするって言ってたじゃないですか」
ミーナ様は納得のいかない顔で、はいはい、と怠そうに立ち上がるとピンヒールをかつんと鳴らした。
「芽依は、今夜デートか?」
「デートていうほどのデートじゃないです。お互い仕事あるし」
「ふーん、でもうまくいってるんだな。あたしだったら、あんな性格も口も悪い奴と一時間だって一緒にいれないけどなっ」
うん、たしかに典とミーナ様を一時間も対峙させたら大変なことになりそう。
へへ、っと変な笑い方をしちゃった。だって、二人はよく似てると思うから。似てるから喧嘩になるんだよね。
「ああ、ミーナさん、まだこんなとこで遊んでるんですか! お客様がお待ちですよ! 今日はクリスマスだし、半年も前からミーナさんに苛められたくて予約してくださってたお客様なんですよっ!」
社長が慌ただしくスタッフルームに入ってきた。
「聖夜のこと待ってたんだよ!」
ミーナ様は社長の首に絡みつくと、そのまま強引に社長の唇を奪う。ふがっ、と変な声をあげた社長はなす統べなくミーナ様のキスを受ける。
マーベラスは、いつもとかわらない。平和に刺激的に毎日が過ぎていく。