××倶楽部

 
 典は、ムッと眉をしかめて吐き捨てるように言った。


「辞めちまえ」

「え……うん、でも一週間だけ研修してみるって、社長と約束しちゃったし……」


「一週間? 処女の芽依が一週間も勤まるわけないだろ! この二日で何教えこまれたんだよ!」


「しょ、処女とか大きい声で言わないでっ! 変態、典! それに経理事務に処女とか関係ないっ! ソフトに数字入力することしか教わってないよ」



 典は、なんだ経理事務か……と少し安心したよう背もたれに寄りかかり、唐揚げをつまんで口の中にいれた。


 この色気もなんもない幼なじみだけど、典成の言うことを聞いて間違えた選択をしたことがない。


 私以上に私を知ってるというか、野生の勘だけで生きてるような男。

 今まで一度たりとも恋愛に発展しなかった私たちは、お互いにお互いのことを知りすぎているからかもしれない。


 それはいい部分もだめな部分も。


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