××倶楽部
「もういい、出かける。今日は帰らないから」
「はいはい、いってらっしゃーい」
狭い玄関でスニーカーの紐をかたく結んで、よし、と気合いいれた。
「あ、典くん出てきた!」
俺は、ミッキーマウスかっての! 着ぐるみじゃねーんだよ!
騒ぎをおさめるべく、自転車に飛び乗ってダッシュ。案の定、暇人たちが追っかけてきた。
公園の真ん中の道を突っ走って、クリスマスで盛り上がる繁華街を抜ける頃には誰も追いついてこれなくなる。
さて、どうするかなぁ……と向かった先は幼なじみの家だった。
────「あ、典。どうしたの? 七人の彼女とデートは?」
「もうしてきた」
おじゃましまーす、と靴を脱ぐ。芽依の家は鶏肉を焼くいい香りがしてる。
「いらっしゃい、典くんの分も料理用意してあるわよ。今、成実さんから電話あって典くんがいくからよろしくって」
くそ……母親同士は、全部お見通しってか。芽依の母親はエプロンで手を拭きながら、にっこりと笑った。
「二人でゲームでもしてたら? お兄ちゃんがもうすぐ帰ってくるから」