××倶楽部
「うーん、事務か……だったらいきなり辞めて無職になっておばさんを心配させるよりはいいか。でもなー、エスエムって、せめてキャバクラがよかったな」
「私もまったく同じこと考えた」
「じゃあ、こうしよう。一週間働いてみて、芽依が事務作業以外に何か別の仕事を頼まれたら辞めろ。その先も、どんどん色んなことに巻き込まれて挙げ句の果てに処女喪失するかもしれないからな。
でも、一週間事務作業だけを約束通りやらせてもらえたならば少しだけ身を置いてもいいかもしれない。だけど、あくまで、おばさんを安心させるためで、身の危険を感じたらすぐ逃げられるようにスニーカーで通勤しろよ。いつ辞めてもいいように覚悟だけしとけ、で、別の仕事探せ」
典成の力強い目つきに、私は大きく頷いた。
小学生の時に秘密基地で近所の悪ガキたちの大将として指示を出してた時から典成の口調に変化はない。
でも、典成にそう言われると何故かすごく安心して頷ける。
「わかった、わかったよ。ハワイの借金返さないといけないし」
「だから、俺はハワイなんか行くなって言ったんだよ! そんなもん俺が……」
「俺が?」
「なんでもない。とにかく、これに懲りてもう騙されるなよ! 芽依はすぐ顔のいい男に騙されるんだから」