××倶楽部
「うん……ほんと、反論できない。だって、面接の時はすごい爽やかな人に見えたんだもん…………」
ショルダーバッグといい、スーツ姿でマウンテンバイクといい、甘いマスクは都会的で洗練された印象をこれからもっと大人で魅力的にさせそうな青年のイメージがあったし、何より語りかけるような優しい言葉使いに邪気を感じられなかった。
逆立ちしたってSM倶楽部の社長には見えなかった。
「おまえ、高校生の時も、アイドルにならないか? てスカウトされて危うくAVデビューしそうになっただろ」
「あ! その時も甘いマスクの優しいお兄さんに声かけられたんだ!」
典は、忘れてんじゃねーよ馬鹿、と吐き捨てるように言ってジョッキに残ったビールを一気飲みした。
「隙が多いんだよ、おまえ絶対接客はするなよ! 幼なじみ辞めるからな!」
「うん、わかってるよ。そうだ、典の会社はどんなかんじなの?」
運ばれてきたばからりのビールの泡に口をつけた幼なじみは、ニッと笑うと、教育係の先輩が美人だとか、同期に可愛い子がいた、とか女の話をはじめた。
へー、ふーん、と適当に相づちをうつ。
女タラしの典らしいなー、と客観的に聞き流した。