××倶楽部

 典は残りの缶ビールを一気に飲むと、そのままベッドに横になって携帯をいじりはじめた。


「あ……そうだよね、ごめん。典。

 でもさ、私さ、しばらくマーベラスで働いてみようかな……」


「はぁあ?」


 典は携帯を投げ出すと、飛び起きて私の目の前でヤンキー座りして睨みつけてくる。


「お前、自分が何言ってるかわかってんのか? SM倶楽部に就職するってのか?」


「うん……そうしようかな……と思ってる」


 眉をしかめた典の顔が目の前に迫ってくる。見慣れた幼なじみの顔は、怒ってるような困惑しているような表情をしている。


「だって、本当に仕事内容は普通なんだもん。経理事務だけしかやらないし、あとはコーヒーいれたりするけど……適度に忙しくってさ、それに社長も女王様たちもなんか家族みたいっていうか、暖かいんだよね」


 典は、あああ! と叫びながら髪をぐしゃぐしゃにすると、あのなぁ! と怒鳴ってきた。


「どんだけ、お人好し? でも、SM倶楽部なんだろ?」


「うん、SM倶楽部だけど」



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