××倶楽部

「まさか……お前、そのクサハラって草食系男子みたいな名前の社長に惚れたとか、そんな単純な理由じゃないよな?」


「えへ、そのまさか」


 単純とか言われたって、しょうがないじゃん。好きなものは、好き。

 付き合いたいとか、そんなことは望まないけど、もう少し社長を見ていたい。私の恋心はそんなもんだ。

 付き合ってる女の子がなかなかホテルに行ってくれないからって別れる典とは、私は違う。


 典は、ヤンキー座りのまま固まっている。


「典? どうしたの?」


 え? あ、ああ……と大人しく絨毯の上に腰を落とした典。

 あれ、おかしいな。怒鳴られると思ったのにさ……


「ねえ、典。ただの例え話だけど、自分の好きな人が他の人とキスしてたら、典はどうする?」


「殴る。相手の男を殴る」


「でも、挨拶みたいなキスなの、本気のキスじゃないよ」


「でも、殴る。って、まさか、芽依?」


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