××倶楽部
社長があまりに真摯に、そして切実に語るので、今すぐをここを飛び出したい、という気持ちが揺らぐ。
「お試し期間で一週間働いてみるってのはどうですか?」
社長は、自分のアイデアにぱあっと表情を明るくさせた。そうだ、それがいい! と勝手に話を進めた。
「お給料はきちんとお支払いしますし、お互いに利点はありますよ! 僕は町田さんの研修期間だと思います。町田さんは、うちに馴染んで仕事を覚えていただき、一週間後に本採用するってのはどうですか?」
わくわくした顔で、迫られると…………だめ、弱いかも。こんな風に、優しそうな男の人に頭を下げられると断れない。
だって、あいつと全然違うから……
「わ、わかりました…………本当に事務だけですよね?」
「はい! もちろん! ここの事務所は女王様たちは出入りしますけど、皆さん根は素晴らしく愛に溢れた方たちなので町田さんもすぐに気に入ると思います。
お客様がこの部屋にいらっしゃることはないです。接客部屋は今入ってきてもらったシャンデリアの通路の奥ですし、接点はありませんよ」