××倶楽部

 社長が優しくニッコリと微笑むと、私の心拍数は急上昇した。


「律儀な方ですね。自宅から少し離れた場所で待ち合わせするようにもできますよ。でも、無理にとは言いません。雨が降ってる日とか……あ、そうだ! 携帯の番号交換しましょうよ!」


「え、いいんですか?」


「いいですよ。そうしましょう。困った時はいつでも呼んでください」



 社長は、「連絡先はきいていたんですけど、やっぱ携帯が便利ですし、あ、町田さんはフェイスブックとかラインって、やりますかー?」 と楽しそうに黒いアンドロイドをさくさくと弄りながら、私たちは携帯番号とメールを交換した。


 聖夜さん……て、登録しちゃおう! 登録ボタンを押すと、社長に手元の画面を覗きこまれて、ドキリとした。

 やっぱり、まずかったかな? 草原社長って登録すればよかったかな?


 社長は気にする素振りも見せずに、フェイスブックのページを開いたり、ラインの使い方を説明してくれている。


「社長、詳しいんですね?」


「はい、女王様たちから教えられました。皆が寂しい思いをしないように、僕はいつでも連絡をとれるようにスタンバイしてます」


 番号を交換するだけでドキドキしているのは私だけ。

 社長にとって携帯は、コミュニケーションツールでしかないと思う。

 でも、贅沢なんかいわない。番号交換できただけすごく幸せだ。


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