××倶楽部
「聖夜……」
裏口がかたんと音をたてて薄手のパーカーを羽織ったリオ様が部屋に入ってきた。いつもなら堂々と胸を張っているリオ様が扉にもたれかかった。
立っているのがやっとという状態だ。
「リオさん! どうしましたか?」
私の隣でニコニコと楽しそうに話していた社長は、携帯をスーツのポケットにしまい、一目散にリオ様に駆け寄る。
「体調が悪くて……今日は私の客はレイラちゃんに任せてもいいかしら?」
社長は、もんろん、と力強く頷くと、すぐにリオ様をお姫様抱っこした。
すごく体調が悪そうだ。顔色が青白く、社長に抱き上げられて安心したように胸元に頭を預けて目を閉じたリオ様。
だ、大丈夫かな?
「リオ様……あ、私も何か……」
「町田さん、リオさんは僕に任せてください。すみませんが、ここをよろしくお願いします」
社長の緊迫した顔。私なんか目もくれずに大切そうにリオ様を抱えて裏口を出て行く。
「はい、リオ様お大事に……」
それだけ言うのがやっとだった……社長から教わったラインのカラフルなページが何だか少し虚しかった。