××倶楽部

「はい、じゃあ……逆に私が仕事を覚えるのが遅いと採用されないってこともあるんですよね?」


「そうですね、こっちもビジネスだからお互いにそういうルールで真面目にやりましょう」


 社長がスーツから出る細くて綺麗な手を差し出した。

 控え目にその手を握る。


 細くてなんて思ったけど、自分よりもずっとしっかりとした大きくて暖かい手。

 黒縁メガネの奥は、契約成立です、と真面目な目をした。


 そうだ、これはビジネスだ。


 ここが、SM倶楽部であろうと何であろうと、私は今日から社会人だ。



「じゃあ、さっそくですが、町田さんはこのデスクを使ってください。更衣室とかは女王様たちのしかないので、動きやすい格好で出勤してくださいね。服装は自由です。荷物はここへ、鍵もかかります」


「はい、ありがとうございます」


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