××倶楽部
朝風呂からあがって、髪を乾かしていたら、携帯が着信を告げていた。
私が現実味ない恋愛ばかりしてしまう理由は、わかってる。今まさに私の携帯を鳴らしている男、典成が原因だ。
「もしもし、典?」
『ああ、俺。別におまえのこと許したわけじゃないけど、俺が貸してる漫画だけ返してほしいから、後で部屋入るからな!』
いきなり斜め上から目線で投げつけるような言葉に苛立つ。ただでさえ寝不足気味でイライラしてるのに!
「人のこと殴ってその態度? もう勝手に部屋に入らないで! 仕事行く前に典の家に持ってくから」
バカ! 漫画の前に、ごめんなさい、が先でしょう?
『殴ってねーよ! 痛くなかっただろ? 俺はおまえの目を覚ましてやろうと思って……』
私、典から暴言吐かれて謝られた記憶がない。
通話を乱暴にとりやめて、携帯をベッドに投げた。バウンドして着地したのを見届けて、またドライヤーのスイッチを入れる。
マイナスイオンでさらさらの髪で今日も社長の素敵な笑顔を堪能するんだから!
すると、また携帯が鳴りだす。
もしかして、また典? しつこいよ!
だけど、相手は中学からの同級生でハワイ旅行も一緒にいった奈美(なみ)だった。