[完]初恋の人は死んでいた?!【短編】
すると、やはり面白そうに私を見る彼。
この人は、私を狂わす。
「やっぱり彌さんは、からかいがいがある人だ」
…Sだ。
この人、絶対Sだ。
だからといって、私はMじゃない。
「人で面白がらないで下さい。
だいたい、私はまだ貴方の名前を聞いていません」
すると、彼は切ない笑みを浮かべた。
その瞬間、私の中がチクリと痛んだ。
「僕の名前は、ありません。
名無しです」
ニコッと笑う彼の裏には、何かが隠れているような気がした。
「じゃあ…、ゴンさんですね」
「ゴンさん…?」
急に何を言うのか、という表情を浮かべる彼。
こんなにも、ストレートに驚くこともできるのか、とちょっと嬉しく思う。
「名無しのゴンベのゴンです」
なかなか私考えたでしょう?
どや顔を見せると、彼はお腹を押さえて笑い出す。
「なっ何ですか?!」
「ハハッ。いや、彌さんは、予想を超える人ですね」
……ゴンさんの、ツボが分からない。
すると、ゴンさんはゴロンと畳に横になる。
「ここの家は落ち着きます」
そんなゴンさんの隣に、私も寝転ぶ。