[完]初恋の人は死んでいた?!【短編】
「それ、いろんな人が言ってくれます」
どこかで聞こえる蝉の声や、風鈴の音。
畳本来の香りと独特の木の香り。
池から聞こえる水の音。
日本人本来の家の形に造られた我が家は、どうも安心感を出すらしい。
もちろん、私が家を出ない理由でもあるが。
「それは、彼氏をよく家に招く、ということですか」
私側に肘を立てて上から覗き込んでくるゴンさん。
その姿は、やけに妖艶だ。
「違います!
私、彼氏いませんから」
私は、ゴロンと向きを変え、彼に背を向ける。
「おや、ぐれてしまいましたね…。
今まで一度も出来たことがないのですか?」
……この人は。
どんどん入り込んでくるのに、なぜか遠い。
私のことだけ探って、私は彼を探れない。
「そうですよ。
ゴンさんこそ、どうなんですか」
自分だけ暴露するのは、やはり悔しい。
「僕も、居たことはありません」
意外な答えに、彼の方に身体を向き直す。
「え、ゴンさん絶対モテるでしょう?」
「それなりですよ。
でも、彼女にしたいのは、ただ一人でした」
あ、またあの切ない目。
「その人とは…」
「上手く行きませんよ、僕は臆病者ですから。
だから、寄ってくる人とだけ関係を持ちました」