[完]初恋の人は死んでいた?!【短編】
そのあと、安田さんは飛び出すように家を出て行った。
一方残された私とゴンさんには沈黙が走る。
「黙っていて、すいません…」
沈黙を破ったのは、ゴンさんで。
私はただ、俯くしか出来なかった。
だって、私に霊感があるなんて思わなかった。
まさか、こんなにも大切なゴンさんが、幽霊なんて、思いもしなかった。
「やはり、僕は気持ち悪いですか?」
ゴンさんは、縁側の私の隣で、やけに小さな声で呟いた。
「……ショックなんです。
貴方のような、優しくて安心する方が、存在しないなんて…」
……こんな素敵な心の持ち主が、亡くなっているなんて。
「それは、意外な返答だ」
彼を見ると、何処か遠くを見つめている。
「なぜ…ですか?」
「霊、と言うものは、先程の彼女のように怖がられたり、気持ち悪がられるのが普通ですから」
…確かにそうだ。
私だって、ゴンさんじゃなかったら、きっと怖い。
……でも、ゴンさんは?
この人は、私はそんな思い抱ける?
抱こうとしようとしたとしても、私には、絶対出来ない。
きっと私は、彼が好きだ。
私は、幽霊に恋をしてしまったのだ。