[完]初恋の人は死んでいた?!【短編】
昔からこうだった。
私が、どんなに頑張っても褒めてはくれない。
いつも怒鳴ってばかり。
だから私は、父を嫌いになった。
それが、子供だって事は、分かっているのに。
自室に戻り、早々と布団を敷く。
苛々したときは、寝るのが1番だ。
だが、寝るにしたって、時間がまだ早い。
そういうときの私の習慣。
それは入浴施設に行く事だ。
早々と準備をしていると、母が部屋に入ってくる。
「どうしたの?」
わざわざ来るのが珍しい、母を見ると、何かかばんを持っている。
「どうせ、お風呂行くんでしょう?
お母さんも一緒に行きたいわ」
不思議だ。
どうして母親は、子供をこんなにも理解出来るのだろうか。
父親には決してない、母親の絶対的な安心感。
「うん、行こうか」
私は母と二人家を出る。
二人で出かけるのは久々で、新鮮な気持ちになる。
向かった先は、昔から来ている入浴施設。
結構いろんな人が利用していて、施設自体が大きい。
健康ランドも併設しているので、親子や老人が沢山来るのだ。
そこを馴れた足取りで入り、お風呂に向かう。