[完]初恋の人は死んでいた?!【短編】
そして、懐かしい匂いが、鼻を掠めた。
どこかで嗅いだことがある。
でも、どこかは分からない。
「あの、どこかで私と会ったこと、ありませんか?」
彼は、ポカーンとしたかと思えば、今度は顔を手で覆って笑い出した。
その行動に、呆気を取られていると、彼は私を見つめ…
「それは、僕を口説いているんですか?」
と、微笑む。
「えっ?!
そういうつもりじゃっ!」
全身の血液が、一気に回りだすのが分かる。
「会ってすぐに口説くなんて、貴女はなかなかのヤリ手ですねぇ?」
なんて言う彼の言葉に、顔から火が出そうだ。
「違うんです!
ただ、懐かしい気がしてっ」
恥ずかしい思いから、身体を起こそうとすると、それを阻止される。
「冗談です。
少しばかり、イジメ過ぎましたか?」
その言葉に、私はムッとして、再び寝転ぶ。
「なんですか、それ。
私、本気で焦りましたよ」
「僕も最初は驚きましたよ?
この人は、僕を…
口説いているのか、と」
そう耳元に呟くものだから、私は反対側に急いで転がった。
「なっ、いつまで私を弄るんですか!」
耳を押さえて、彼を威嚇する。