く ち び る
「豪華客船二隻が謎の沈没、ねぇ」
下界の新聞に目をやりながら、冷めてしまったコーヒーを啜る。
ここ数日忙しかったのはこれのせいか。なんて、大天使の階級を持つ俺のセリフじゃないか。
「着替えるのめんどーだな」
やっと仕事も片付いたし、久しぶりの仮眠をとろう。
申し訳程度にぶら下がっていたネクタイを取り払い、キングサイズのベッドに横たわったときだった。
「大天使様!大天使様!」
ノックも無しに重たい扉が開く。ヒステリックな声を上げながら部下が自室へと侵入してきた。
「……うるさい、退け」
「そうはいきません!死亡予定リスト!先程お渡ししましたでしょう!」
ほらこれ!と机に乱雑に置かれていた(置いたのはもちろん俺だ)ペラペラの紙を突きつけられる。
そこには「魂」を回収する予定の女の名前がひとつ、記載されていた。