く ち び る


「ってことで、オレ嘘つくの向いてないから、ちづはオレと一緒に帰るべき」


「意味わかんない」


会話するのも面倒になって、私は歩幅を広くし歩くピッチをあげた。


「ね、本屋寄っていい?」


ひょい、と顔を覗き込むヤツに、私は心の中で溜め息をつく。


「一緒に帰るなんて言ってない」


「『四奏シリーズ』の新刊出たみたいだよ」


「……行く」


釣られた私に、にこっと笑顔が返ってくる。


してやったりな顔だったら睨み付けてやれるのに、毒気のない笑顔には目をそらすのが精一杯。


< 11 / 116 >

この作品をシェア

pagetop