く ち び る
「ってことで、オレ嘘つくの向いてないから、ちづはオレと一緒に帰るべき」
「意味わかんない」
会話するのも面倒になって、私は歩幅を広くし歩くピッチをあげた。
「ね、本屋寄っていい?」
ひょい、と顔を覗き込むヤツに、私は心の中で溜め息をつく。
「一緒に帰るなんて言ってない」
「『四奏シリーズ』の新刊出たみたいだよ」
「……行く」
釣られた私に、にこっと笑顔が返ってくる。
してやったりな顔だったら睨み付けてやれるのに、毒気のない笑顔には目をそらすのが精一杯。