く ち び る


 薄笑いすら、様になる。

 スっと身を引いた男は、ソファーに腰掛けネクタイを緩めた。

 金白の髪に、恐ろしく白い肌。だるそうに下がる瞼の下には、宝石のような翠が覗いている。

 まるで、人形のようだ。現実離れしすぎていて、生気を感じられない。


「名前は、なんて言うの?」


 どこから現れたの?何者なの?そもそも人間?

 始めに聞くべきことがたくさんある。だが、恐怖に勝る彼への興味が自分の口を突き動かす。

 彼の雰囲気に、呑み込まれてしまったに違いない。現実的にとか科学的にとかはどうでもよくなってしまった。

 だって現実に起きてしまったのだから。それに、


「名前?」

「うん、聞かせて」


 夢、だと思えばいい。

 夢は科学的にも解明されてない部分が多いから。

 ソファーでテレビを見ているうちに、きっと寝てしまったんだ。腕の痛みは、忘れてしまおう。


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