く ち び る

× × ×



だるい。

動く度にきしむ関節に眉が寄って、不意に襲われる寒気に身体が震えた。


でもわたしは根っからの強がりだったようだ。

今日はじめて気付いた。


朝からいつも通りに振る舞い、家族にさえ悟らせずにやっと午後の授業も終わりを迎えた。


ただ、昼間りり子に「のばら、しんどくない? 無理してるんじゃないの?」と聞かれた。


さすがりり子、だと思った。

りり子のこういうところが嫌いになれなくて、余計にもどかしかったりもする。


いっそ嫌いになれたらどれほど楽なんだろう、なんて。



――放課後、人が少なくなったのを見計らい席を立つわたしの前に、りり子は来た。


「のばら、先生に頼んで送ってもらおうよ。りり子がお願いしてくるよ?」

とりり子は提案してくれたけど、わたしは適当にごまかした。


こんなわたしをとても心配してくれるりり子に、罪悪感がチクチク胸を刺したから。


納得してない、と顔に書いて唸ってたけれど最後に、

「たまには素直にならなきゃ、のばらが辛いだけだよ?」



その言葉が引っかかって考えていれば「……また、明日ね?」と言ってりり子は帰った。


そこまでは良かったのだけれども、だ。

体のだるさが消えない。
悪化してる、当たり前だけど。

「……保健室、」

薬をもらって少し休んでから帰ろう。


早速行動に移そうとしたわたしの決断とは裏腹に、わたしの体がいうことを聞かない。

「っ!」

しかも素早く行動しようとしたためにバランスが崩れた。


ガシャガシャ!


と派手な音を立てて、机やイスを巻き込み倒れてしまった。

「……」

しばらく呆然と天井を眺めた。



あまりにも情けない。
すごく惨め。
なんて惨めなの。




ただ、唯一の救いは人がいなかったこと。

こんな恥ずかしい姿、見られずにすんで


「よかった……」

「よかったって、なにが?」

「!!」


七草くんがいたなんて……厭味なまでに最高のタイミングだわ。


クスクスと微かに空気を震わせながら、唇に弧を描く七草くんに眉が寄ってく。

でも頬に貼られた絆創膏を見て、思わず目をそらした。


すぐ傍まで来て、七草くんは言った。


「起こすの、手伝ってあげよっか?」


彼は返事を求めてない。


なぜなら、言いながらわたしの背と膝裏に手を差し入れたから。


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