く ち び る


頼んでない。
早く出ていって。
わたしに笑いかけないで。
わたしに触れないで。


たくさんの拒絶の言葉を吐きたかった。

なのに頭の奥で響く、相反して喜ぶわたしの声。

せめぎあって、どうしたらいいかわからなくて、せめてもの逃げ道に無言を徹した。





わたしが今声を出したら何を言ってしまうのかわからなくて、恐かったから。


わたしの席まで来ると七草くんは、わたしを机に下ろし、彼自身はわたしのイスに座った。


机から降りようとすればすぐさま太ももを押さえ込まれた。


それだけじゃ済まず、足を無理やり開かされる。


慌てて机に手をついて、なんとか逃れようとしてると爪がきつく食い込んだ。


彼を睨み付けようとして、背筋が凍った。


「――ねえ」


昨日と同じ、ゾッと体の体温が下がっていく冷ややかな目。


「どうして、昨日、逃げたの?」


一つ一つ、区切られる言葉。

喉がすぼまって一瞬、呼吸の仕方を忘れた。


「風邪ひいちゃったんでしょ? だから昨日僕の家に寄ればよかったのにさ……なんで?」


なんで、とよく聞けたものだ。
また泣きそうになって、彼から顔をそむけた。


それをどう受け止めたのかわからない。


「ふうん。ま、いいけど」


彼は至極つまらなさそうに言いながら、太ももを掴んでいた手を滑らした。

滑らし、指でなぞり、爪を食い込ませる。


「、ふっ……」


もどかしくて微かに息を漏らせば、彼はわたしを見た。

冷ややかな目のまま、無表情で。


ゾクリ、と体の芯が疼いた。


「ココ、どうなっちゃったのかな?」

首を横に振った。

知らない、と、やめて、の意味を込めて。


「あ、そ」


七草くんは感情のこもらない声で言うなり、下着の横から指を侵入させた。

そして一言。

「ちゃんと手、支えときなよ」




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