く ち び る


「俺は、早く大人になりたいんです」


それが彼の口癖だった。

大人ぶった敬語を使うのがその証拠。


「だからね、イチさん。俺は今すぐにでもあなたのことをめちゃくちゃにしたい」


そう言いながら私の唇をなぞる細い指に、鳥肌が立つ。

官能的で、恐怖すら覚えそうな美しさ。


ねぇ、そんなあなたがどうして私と向き合っているの。


< 36 / 116 >

この作品をシェア

pagetop