く ち び る
「私は、大人になんてなりたくないよ…」
変化を受け入れるのが怖いから、私はずっと立ち止まったまま。
毎日呼吸をするだけで精一杯なのに、大人になったらもっと苦しいことが増えてしまう。
そんなの、私には堪えられない。
「わかってます」
そっと指が離れて、その腕が私を抱き締める。
だけど私たちはそれ以上先には進まない。
「イチさん、イチさん…イチさん…っ」
切なげに響く彼の声。
だから彼も私の名前は呼ばない。