く ち び る

目が合った瞬間確信した。

私の心の隙間を埋めてくれるのは、彼以外にいないって。


けれど見つめ合って、抱き締めあって、そこから先は私の体が彼を拒んだ。


深く関わったら関わるだけ、別れた時の傷は深くなってしまうことを、私は知っていた。

そして彼も。

彼氏に振られて私は、時間が進むことをひどく怖がるようになった。

大人になったらこれより辛いことがもっと待っているんじゃない?


そう考えたら大人になった時の自分なんて想像もしたくなかった。

けれどサキくんは反対に、彼女に振られたのをきっかけに時間が早く進むことを望むようになった。

< 39 / 116 >

この作品をシェア

pagetop