く ち び る


「ちーづ。数学の宿題やった?」

「やってない」

「うそ。ね、答え合わせしよ?」

「しない」

「ええ~……」


教室につくと、席にカバンを置くよりも早く、先に到着していたヤツが私に話かけてきた。


これも、いつものこと。

日によって話題はマチマチだが、必ずといっていいほど話しかけてくる。


ああ、神様。

どうしてヤツが私の隣の席なのでしょう。


席替えが待ち遠しい。


しゅん、とうなだれるヤツに、私が来る直前まで会話していたのであろう女子が、すかさず話題を振る。


「ワタル。あたしと答え合わせしようよ」

「ワタル、あたしもあたしもー」


そんな根暗ほっといてさ。

語尾にそう聞こえた気がしたのは、被害妄想じゃない筈。


隣の席っていうだけで女子の大半を敵に回したのは、初日から気付いていた。


因みにヤツのもう一方の隣は壁。


なんなら四方を壁に囲まれてくれれば、こんなに面倒くさいことにならなかったろうに。


もしくは誰か今すぐ席を替わってよ。


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