く ち び る
残酷だ。
私がしていることは彼にとって、とてつもなく残酷だ。

だからもう、言ってしまおう。

「離れてもいいんだよ、サキくん」



互いに依存しあう関係をあんたが望まないのなら、無理して傍にいてくれなくても構わない。

長い間考えて、やっと結論付けることができた。


「…っふざけないでください!」

急に波立つ彼の声が弾けると同時に、首に鋭い痛みが走る。

じんじんと押し寄せる熱に戸惑いが隠せない。


「サキ、くん?」

「あなたは、何もわかってない…!」

そのまま手首を掴まれ、固い床に押し倒される。

これほど激情を露わにする彼を初めて見た。


< 42 / 116 >

この作品をシェア

pagetop